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宇都宮雅之(25)。市立高校の数学教師である。
愛車(と言ってもママチャリであるが)で今日も颯爽と通勤してきた。遠くからでも一目でそれと分かる姿勢の良さ。
ひょろ長いので「ネギ」とか「ゴボウ」とか「きゅうり」とか、なぜか野菜にちなんだあだ名が多い。某パン会社の「ナイス◯ティック」と呼んでくれる生徒もいたが、いずれにしても食べ物だった。
今年初めてクラスの担任となり、二年三組を受け持っている。
真面目で誠実な彼は自分なりに生徒に向かい合い、一人一人を大切にしてきたつもりだ。
「柚木、部活行くぞ」
「あ、俺今日きゅうりと語り合いの日」
「そっか、じゃあ先行くわ」
「おう」
「語り合いの日」とは。出席番号の日付の生徒が、放課後に教室に残り、宇都宮先生と文字通り語り合う。クラスの生徒が三十人なので、一人ひとり語り合うと、ちょうど一月回るということだ。休日に掛かった番号の生徒は、次の日の昼に振り替えとなる。
最初は嫌がる生徒もいた。徐々に習慣になると、部活命のスポーツ小僧柚木も、ヤンキーでさえも呼ばれずとも教室に残るようになっていた。
宇都宮先生は生徒を愛している。生徒たちもクソ真面目な彼を愛していた。
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