忘れてください

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忘れてください

 家でも学校でも、俺はいないものだった。  親は放任主義で、幼い頃から生活に必要なだけの金を与えられ、後は放置されていた。  そんな生活環境で育ったせいなのか、人とうまく関われず、最終的に学校内では、完全無視という形の扱いを受けた。  誰も俺と口をきかない。グループ活動の時ですら一人で行動させられる。  同じクラスの連中はそんなだし、教師もそれを見て見ぬフリをする。  それならそれで構わない。そう思っていたのに、ある時俺の中で何かが切れ、発作的に俺は屋上から飛び降りて命を絶った。  死んだらそれで嫌なこと辛いこと苦しいこと、全部終わる。もっと早くこうすればよかった。  飛ぶ寸前、そんなことを考えた。でもそれは間違いだった。  叩きつけられたコンクリの地面に、俺の意識はへばりついて離れないままだ。ひたすら激しい苦痛が、意識と、もう存在しない全身を苛む。  死んだら全部終われるんじゃないのか。きれいさっぱり何もかも消えるんじゃないのか。  そんな俺の疑問に、どこからか声が応じた。  自殺した人間に限り、普通の形では成仏できない。自殺者のことを周り総てが完全に忘れ去るまで、その意識は死んだ瞬間に縛られる。  …嘘だろ?
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