自己中死

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何故こうなったのか、考えてみても分からない。 死んだ自分の体を俯瞰で眺めながら僕はフワフワと自室の天井あたりを浮かんでいる。 机の上に置いてあった古びた本を見て思い出した。 人を病気にしたり怪我をさせたり呪い殺す方法が書いてある「呪術指南書」。 下校中に拾ったあの本で僕の人生は大きく変わったんだ。 その本に書いてある通りに両手の指で形を作り、それに向かって「○○君は骨折する」と言えば本当にそれは起きた。 僕は最初、大嫌いなクラスメイトの中山君を懲らしめるために怪我をさせたり、いつも僕のことを馬鹿にする体育教師の左門先生の車を故障させたりした。 でも彼らは改心するまでには至らなかった。 そこで骨折させたり大金を無くしたりしたけどそれでも悪いままだった。 それは嫌いなテレビタレントもそうだったし、嘘つきの政治家も虐待癖のある隣人もそうだった。 どいつもこいつも自己中心的な奴ばかりだ。 僕は世の中を良くするためだと思って人を呪いの力で殺すことにしたんだ。 でも毎日殺しても悪い奴は次から次へと湧いてくる。 これじゃキリがないと思ってこう言ったんだ。 「自己中な人はみんな死んじゃえ!」 あの本の通りにやったのに何故こうなったのか、僕にはどうしてもわからない。
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