その八 白蛇

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 蛇のうろこが冷たく光る様子や、うねうねと皮膚が動く感じ、ぬるっと体に巻き付き、得体のしれない赤い目玉が自分を見つめた衝撃は、確かに現実のものだ。幻想ではない。  震える指で、首筋に手をやった。  ぽつんと指先に触れる跡がある。  蛇に噛まれたところに、なにかの跡ができていた。  傷ではなさそうだ。痛みは全くない。  ただ、じんじんと熱く、そこに奇妙な力が宿るのが分かるのだった。  (これは)  指先に神経を集中させて、それがなんの印なのか探っていたイワナガは、ある形を探り当てて愕然とした。  水たまりか、なにか鏡がわりになるものを見ないとはっきりとはわからないが、指先がなぞった形は、とぐろを巻いた蛇の形に似ていたのである。  「さあ、おまえの中に入り込んだからね」  深い女の声が囁いたようだった。  ざわざわと全身の毛穴がたちあがり、イワナガは唐突にこみ上げた強い嘔吐感を堪えてその場で転がった。  異質なものが体に入り込み、イワナガと交わろうとしている。  ……。  「受け入れなさい、わたしを」  と、それは言い放ち、イワナガはその声と強引な力に抗えず、転がった姿のまま気絶した。     
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