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(わたしは、どれくらいの間、眠っていたのだろう)
呆然としてイワナガは辺りを見回した。
どろどろに生命が煮えたぎった溶岩の中に落ちたと思ったのだが、どうやらそれは幻想だったらしい。
イワナガの頭上は真っ赤に澱んだ不気味な空が広がっており、足元は黒々とした岩肌が覗いていた。
未だ、不思議な腕に抱かれたまま、イワナガは目を見開いている。
もわもわと、陰気な霧が通り過ぎていった。
こうん……。
葬儀の鐘は鳴り続いている。こうん、こうん。
「イワナガ、あなたの叡智が目を覚ましました。あなた自身に宿る力はこんなものではありません」
豊かな胸の間にイワナガの額を押し入れ、華奢な指先で背中を撫でてくれながら、そのひとは言った。
顔をあげてそのひとを見上げようとするも、恐ろしい力で頭を押さえつけられ、できなかった。
「影のない光に深みはなく、進歩はないものです」
こうん、こうん、こうん……。
「だから、あなたは必要なのですよ」
オオヤマツミだけではなく、葦原中国に、あなたは必要なのですよ……。
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