その二 欲し

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 どういうわけか、執着心すら持っているようである。  フツの目を通して見るクマソタケルは、白い蛇の気を纏いつかせ、目に強い光を宿らせていた。その目には焦燥が見える。なんの焦燥だろう。  (……驚いたな)  海辺の村に張った天幕の中で、オシヒはあぐらをかいているのだ。  真昼間から酒を喰らいながら、オシヒは怯え果てるフツを通し、クマソを観察していた。  誰もこの天幕には入るなと兵たちには言い渡してある。部下たちには、この手持無沙汰な時間を、どのようにでも好きに過ごせと言い渡してある。  最も、この無人の村の中で、なにか楽しいことがあるわけがないのだが。  ちびちびと酒を舐め乍ら、オシヒは面白く思っていた。  (この男、あの哀れな小娘を愛おしんでいるというのか)  フツは未だぺらぺらと、イワナガについて喋りつづけている。  タケルはしかし、眉一筋動かさず、ただそれを聞いており――やがて、こう言ったのだった。  「面白い話だな。貴様らの国では、イワナガが穢れた醜い者だと蔑んでいたという事だが」  そうなんですそうなんですよ、ほんとうに嫌らしい奴で、いっそ死ねばいいとみんな思っていました。  ……全く空気を読まず、勢いだけでフツが相槌を打っている。     
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