その二 欲し

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 (ばか、いい加減にしておけばいいものを)  一方オシヒは眉をしかめ、柄にもなくフツの身を案じた。  (おい、よせ、それ以上喋るな……)  しかし、オシヒの念はフツには通じない。  タケルは立ち上がった。  フツを捉えている二人の男に、フツに食事と寝床を与えるように命じると宮の中に姿を消した。  背中を向けながら、タケルは言ったのである。  「その穢れた娘は、この地では神に認められ、印を与えられたのだがな……」  え、は、と、フツが訳も分からずに口を開けたり閉めたりしている様子に、オシヒは頭を抱えたくなる思いだった。  せめてもう少しましな者をクマソに送りこめばよかったと思ったが、残りの四人の部下の中に適切な者がいるとも思えなかった。  (つまり、オオヤマツミ人はみな、馬鹿ということかよ)  清さに包まれて生きてきて、その他を知らない。  オオヤマツミ人は皆、同じ価値観で生きているのだ。  とりあえず、フツが今すぐに命を奪われることはなさそうだった。  クマソタケルは奥に引っ込んでしまったし、フツはフツで、二人の兵士に引っ張られて牢のような場所に放り込まれてしまった。格子窓がついた小屋であり、雨風はしのげるだろう。     
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