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そこまで確認し、オシヒは「通信」をいったん、切ったのだった。
ざざん――ざざん。
波の音が荒く聞こえている。
ばたばたと、潮風を受けて天幕の布が音を立てていた。
クマソの内部の様子はなんとなくわかった。
問題は、ここにどう攻め入るかであるが――フツを通してクマソの地を観察したオシヒには、その答えが見えかけていたのである。
(クマソを護る神……白い蛇)
モモソとかいう。
(そいつに接触するのが、いちばん手っ取り早そうだ)
神の次元でならば、クマソの地に入らないままでもモモソと会いまみえることはできよう。
(天孫である若様が、その役割に相応しかろう)
モモソと高天原が話し合う。
モモソに、クマソの地を護る結界を排除するよう命じる。
ニニギの力が必要だとオシヒは思った。
酒をちびちび舐めながら、ばさばさと風をはらむ天幕を見回した。
隙間から差し込む日差しに色が付いてきている。夕方らしい。まもなく夜になるだろう。
(明朝、オオヤマツミに戻るとするか……)
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