その三 花舞

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 幼いイワナガが暗い部屋で、高熱で発疹を出しつつ、食事もとらずに喘いでいる一方、咳をひとつしたというだけで薬師を呼ぶ騒ぎになり、大事に大事に守られ、その容態を皆から心配されているサクヤ……。  うわあああん、ああん、わあああああん……。  白い腕が更に強くイワナガを抱きしめ、とんとんと背中を叩いてくれている。  イワナガはやがて、自分を抱きしめてくれる人に、必死になって縋りついていたのだった。  (おかあさん、おかあさん……)  「可哀そうに、可哀そうに」  低く優しい声で囁きながら、その人はイワナガの背中を叩き続けてくれた。  やがてイワナガは強烈な眠気を覚える。ふいに抱き上げられ、幼い体は胸の中に埋もれるようにして抱え上げられていた。  ゆらゆらと揺り籠が揺れるようにあやされながら、イワナガはしゃくりあげ――やがて、眠りの中に落ちた。  それは、どろどろで、見るからに恐ろしい熱気がたち込める、紅蓮の溶岩が泡を立てている穴だった。  その穴の中に落ち込み、骨まで溶かされるような眠りに、イワナガは着いたのである。  凄まじい熱はあらゆる命を溶かし、どろどろと混ざりあい、そしてそこからまた新しい造形物が生まれる。  (生命の源は、黄泉の底にある)  自分自身の体が形を失ってゆく感覚は、心地よいものだった。     
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