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こうん、こうん。
悼みの鐘が陰気に鳴り響く。夕日は大きく歪みながら海に落ち、辺りは容赦なく暗くなる。
もうじき夜。おおおん、おおおーん、近い場所で獣が飢えた咆哮を放つ。
かあさんかあさんと泣きじゃくる子は、その声を聞き、薄暗くなってくる辺りにも怯え、更に声を立てて泣くのだった。
救いは来ない。
(わかりましたか、これが今の葦原中国)
優しい穏やかな母の声が耳元で囁く。子守歌のようだ。イワナガは心地よく目を閉じている。
(この黄泉の国にも、何千と魂が落ちてくる)
悲しい記憶を持った魂が幾千と。
命の溶岩に溶かされ混じり合い、やがて再び地上へ帰る時が来るけれど、その無残な記憶は消えることはない。
繰り返される。
無造作な命の駆け引きが。
灼熱の眠りの中で、イワナガはその無残な景色を眺めていた。
葦原中国全体が、真っ赤に染まっていた。
このままではいけない。このままでは。
そして、一条の光が天から差し、やがてそれは虹色の彩雲となった。
(天孫、ニニギ。葦原中国を統治し、この争いを治めるために遣わされたひと……)
イワナガは感情を込めず、ただ淡々と眺めつづけていた。
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