その三 花舞

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 (モモソも、争いを好まないのならば、こちらの要求を呑むはずだ)  ニニギはそう考えた。  今や高天原の勢力が、滅亡寸前の古の神を遙かに越えていることくらい、誰でも分かることだ。  (モモソ信仰を取り上げるわけでもない。社は社として残しておく)  どうせ、放っておいても滅びる神なのだ。片隅に存在していたとして、痛くもかゆくもない。  「やってみよう」  と、ニニギは言い、オシヒは頷いた。  縁に控えているツクメも、その痩せた体を更に折り曲げ、賛同の意を示した。  「新月の晩ですかな」  控えていたツクメが、縁から広場に響く声で言った。  ニニギは頷いた。  新月の晩に、モモソ神と交流を持つ儀式を執り行う。  「明後日、です」  ツクメが告げた。     
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