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ほうほけきょけきょけきょ――夏が近いのに未だに春の音を鳴き続ける鳥が、高らかに歌った。
頬を赤らめ、目を輝かせたサクヤの側に膝をつくと、ニニギは無言で、その美しいものを押し倒し、押し開いたのだった。
えもいわれぬ香と、美しい小鳥が歌うようなか細い声があがる。
さらさらと庭の小川が流れる音が聞こえる。
その小川は日差しを反射し、ひらひらと白い光が舞うように部屋の中を踊るのだった。
「俺は、おまえをこの上なく愛しており、おまえ以外の女をこれほど愛することはないだろう」
ニニギが言うと、サクヤが白い喉をのけぞらせて声をあげた。
紅を塗った唇がほころんでいる。
美しい、この世で最も美しく、穢れのない、完璧なサクヤ。
愛しい、愛しい、大切だ、愛しい……。
「ニニギ様」
と、サクヤは名を叫んだ。
その瞬間、サクヤの中で満ち足りた歓喜ははじけ、素晴らしい香りを立てながら黄金色の気を放ったのだった。
ニニギ様、ニニギ様、ニニギ様。
……。
(ああ、誰もがみんな清くて良い人、愛すべき人ばかり)
ああ、あ、嬉しい、あっ……。
「愛している、おまえのために、俺は戦う」
どれほどの難関であろうと、またおまえを抱くために、俺はいくらでも戦えるだろう。
「ニニギ様」
ああ、嬉しい、ああっ。
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