その四 恨果

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 葦原中国が作られたそもそもの始まりや、高天原由来の神以外にも古い神が存在すること、それからオオヤマツミのことについても、容赦なく情報は流れ込んで来る。  目覚める度にイワナガは恐怖や悲しみ、孤独感で泣きじゃくり、またその母親のような人に慰められた。  イワナガは泣き疲れて眠りに落ちる度に、注ぎ込まれるように色々なことを知らされた。恐ろしい速度で増してゆく知識は、しかし、救いようのない孤独の影を帯びていた。  幼子の姿だったイワナガが、眠り、目覚める度に少しずつ大きくなってゆく。  優しい癒しの腕の中で、ひょろひょろと手足も伸びて行き、寂しそうな顔立ちの少女に育ってゆく。  「それは叡智」  イワナガが自分の中に注ぎ込まれている「それ」を不思議がると、そのひとは穏やかな声で教えてくれた。  「もともと、あなたに与えられ、備わっているもの。今まで奥底に閉じ込められていた叡智を、呼び起こしただけです」  オオヤマツミの王がどうしてイワナガに穢れを集中させたのか。  どうして自分がここまで忌み嫌われて来なければならなかったのか。  イワナガもサクヤも高天原から祝福された生まれであり、葦原中国を繁栄に導く力を携えていることも知った。  どちらか片方だけの力では、何かが欠落してしまうということも。     
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