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「あなたはあまりにも苦しんできました。それであなたは、全てを見通す目を失いかけていたのです」
だから、ここで、わたしの胸の中で、苦しみを振り落としてゆきなさい。
そして失いかけていたものを取り戻しなさい。
……。
サクヤが妬ましかった。
妬ましさのあまり、サクヤのことを考えるだけで気が狂いそうである。
ニニギに嫁いだのはイワナガとサクヤの二人であるのに、ニニギが欲しいのはサクヤだけだった。
(サクヤあ……)
父王は、イワナガに穢れを集中させて清らかなオオヤマツミを作り上げた。その中でサクヤは穢れを知らないまま清く成長した。
(全部、わたしが背負ったからなのに)
オオヤマツミが華やかに栄えているのは、イワナガが人柱になったから。
にもかかわらず、誰がイワナガを顧みただろう。
ぼこぼこと真紅の溶岩が噴き上がる。
ぼこっ――大きな弧を描き、黄色く澱んだ空に向かい、溶岩の噴水が放たれる。
ぼこぼこ――ぼこぼこ……。
「うふふ、みんな良い人ばかり。清らかなこの国が大好きよ」
花がほころぶ。人々が次々と笑顔になってゆく。光の中で舞い遊ぶような娘、サクヤ。
(許さない)
……。
「みんな、わたしのことが好きなのよ。だからわたしもみんなのことが大好き。幸せよ……」
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