その四 恨果

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 ふふ、うふふ、うふふふふ・・・…ふふふ。  ひらひらと光の中を舞い散る薄桃色の花びら。その中を楽しそうに飛ぶ純白の蝶。  愛らしく、花びらたちに護られるようにして、ただ生きることの良い面ばかりを享受している。この蝶はサクヤだ。  (許さない、大嫌い、憎い、憎い、憎い、憎い……)  ぼこぼこっ……ぼこっ。  眠りの中で、イワナガは手を伸ばして蝶を捕らえる。  憎悪に満ちたイワナガを知り、蝶は怯える。そして、悲しみ、打ち震える。  サクヤは、イワナガを心底恐れているのだ。  憎悪を知らないまま清く育ったサクヤである。  自分が誰かから憎まれることがあるなど、受け入れられないのだった。  「どうして」  サクヤは青ざめ、涙を流し、イワナガを見上げる。  イワナガの手の中で、サクヤは余りにも儚い。美しく、弱い、あまりにも弱いサクヤ。  「許す必要はありませんよ」  微笑みを含んだ声が耳元で囁いた。  イワナガは手の中の蝶を睨み、指に力を込めようとした瞬間に目覚めた。  するすると背丈が伸び、髪の毛も長く揺れている。随分成長した姿で、イワナガは抱きしめられ、あやされていたのだった。     
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