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「臭い、穢れだ」
「来るな、こっちに来るな」
人々の目、目、目。
「いやねえ、なんだってあんなのが生きているんだろう」
「どこかに行けばいいのに……」
放たれる言葉の矢。
イワナガは思い出して体を強張らせ、また眠りの中に落ちようとした。
だが、抱きしめてくれている腕はそれを許してくれなかった。目を閉ざしたイワナガを何度か揺すり、軽く頬を叩いたのだった。
「誰がどう言おうとも、あなたは必要な存在であり、使命を持って葦原中国に生を受けたのです」
……。
イワナガは目をきつく閉じた。
怖いのだった。
草薙に振り回されていた時のことが蘇ってきた。
(草薙は、わたしの憎悪に反応し、憎悪のままに働いた……)
今のイワナガには、どうして草薙が自分に憑りつき、狂ったように人を殺したのか、染みるように分かるのだった。
草薙は、強い力を持つものに引き寄せられる性質があるので、イワナガの底なしの暗闇を面白がったのだ。
持つ人が変われば神器にも凶器にもなる。だからニニギは、イワナガが草薙に触れた時、激怒したのだろう。
(わたしの中に溜まった憎悪が草薙に人を殺させた。つまり、わたしが殺した……)
いたたまれなくなった。
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