拝啓 合田和明先生

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あれからあなたは中学生になり、高校生になり、大学生になり、そして教員としてまたこの学校に戻ってきました。 あなたがどんな学生生活を送ったのか、私はわかりません。 でも、そんなの構わない。この学校に戻ってきてくれた。もうただそれだけで、幸せすぎるくらい私は幸せでした。 本当にありがとう。 この再会は、きっと運命なんだと思いました。 その時のあなたの横には、特定の女性はいない様子でした。それも、私は嬉しかった。 長い間、離れていた時間。その間にどんな恋をして、別れを経験して、どんな想い出があなたに残ったのかはわからないけれど、あなたをより魅力的な男性にしてくれた訳ですから、感謝しています。 教員としての生活は、思うようにはなかなか行かないことが多いようですね。 でもどんな時も一生懸命、真っ直ぐに生徒さんと向き合うあなたを私は応援しています。あなたが担任に持った生徒さんは幸せ者だと思います。 こんな風にあなたを見守る時間を再び持てたこと、神さまに感謝しています。 だから、六年前私の寿命が来て、伐り倒すことが決まった時には、残念だったけれど、思い残すことはありませんでした。 終わりの日は、いつか来ると思っていました。もうピンク色の花で小さな子供たちを喜ばせたり、暑い夏に木陰を作ったり、校庭に出て声を荒げるあなたの姿を見たりすることはなくなるけれど、私のことを記憶し、その記憶を時々思い出してくれる人がいる。それだけで安らかに逝けたのです。 そんな私に神さまがさらにプレゼントをくださいました。本当に奇跡みたいなプレゼントです。 この手紙があなたに届く頃、私はきっと小学一年生として、あなたの前に現れていることでしょう。 新しく植えられた桜の樹の下で、先生と生徒として写真に収まることが今の私の一番の夢。それを一生の宝物にして、私は生きていきたいと思っています。 先生、応援してね。
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