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ゴッドムーンは得宗家を狙ってる
僕は透子さんと夕凪駅のメインストリートにあるカラオケボックス《呪い犬》に入った。
「カラオケか~、うちらのころはディスコ全盛期だよ?知ってた?ほっかほっか亭の1号店って草加市にあったのよ?」
「へぇー、そ~か~」
「オヤジギャグ?君まだ20代でしょ?こんなオバさんが相手でごめんね?」
ほっかほっか亭が出来たのは1976年だ。俺の頭のなかには年表が詰まってる。あの頃はルームランナーが流行し、アガサ・クリスティや毛沢東が亡くなり、日本尊厳死協会が設立された。
「確かに婆さんですね?僕のママより年上だ」
小顔だし整形をしてるせいなのか?鈴木保奈美に似てなくもないが、50は過ぎている。
「もう、恭ちゃんのイジワル~ママと私、どっちがキレイ?」
「そりゃあ透子さんに決まってるじゃないですか?それにしても遅いわね?どんだけ待たせんのよ?」
バカップルがハゲ頭の店員とダベっている。
ネームプレートには《諏訪》とある。
諏訪盛重は、北条時頼に仕えた御家人だ。清和源氏の血を引いている。弓の名手だ。
待合室のソファで透子さんは僕の腕をナデナデしながら、耳に舌を入れてきた。
「ハウッ」
「こっちの方も感じてるんじゃないの?」
透子さんはジーパンの上からナデナデしてきた。「十八番な何なの?」
バレてないのか、諏訪は注意すらしない。
「福山雅治の桜坂です」
「私の雅治を汚さないで?」
僕は思わず透子さんを睨んだ。泣きそうだ!ゴッドムーンなんかやめたい。
何が悲しくてこんなおばさんにオツマミいじられないといけないのか?
「生殖器が固くなってるよ?」
『さぁ~病んでいこうか~?』と、呪い犬の企業メロディーがスピーカーから流れる。
首吊り死体が時々、室内で見つかる。 ご丁寧にロープまで用意してくれている。
ついこの間も猿飛佐助の死体が見つかったばっかりだ。
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