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真っ暗な時間、ボクはやっぱり泣こうとした。
何が悲しいのかさえ忘れたのに、何故泣いているのかも判らないのに、ただ泣くことしか知らないボクは、眠るその前まで掠れた声を吐き出そうとしたんだ。
何だろう?
それまで聞こえなかった音に閉じていた瞼を動かした。
しとしとと、ポタポタと、ザァーザァーと落ちてきていた水滴が止まり、タンタンと聞き覚えのない音がしたんだ。
「───まだ生きてる……良かった。
こんな梅雨時に捨てるなんて、酷い奴がいるんだな。
お前、ウチ来る?」
冷たくなった身体に温もりが触れる。
人の鼓動に懐かしさを感じて涙が落ちた。
~fin~
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