雨の日

3/3
前へ
/3ページ
次へ
真っ暗な時間、ボクはやっぱり泣こうとした。 何が悲しいのかさえ忘れたのに、何故泣いているのかも判らないのに、ただ泣くことしか知らないボクは、眠るその前まで掠れた声を吐き出そうとしたんだ。 何だろう? それまで聞こえなかった音に閉じていた瞼を動かした。 しとしとと、ポタポタと、ザァーザァーと落ちてきていた水滴が止まり、タンタンと聞き覚えのない音がしたんだ。 「───まだ生きてる……良かった。 こんな梅雨時に捨てるなんて、酷い奴がいるんだな。 お前、ウチ来る?」 冷たくなった身体に温もりが触れる。 人の鼓動に懐かしさを感じて涙が落ちた。 ~fin~
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加