雨のときの観察日記

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 そんな様々な生きものの生き生きとした様子をながめては、私は自らのほほえみがよりいっそう温かなものへと変わっていくのを感じました。 最近は、いろいろ(イヤ)なこともあるでしょうけど、そういったものも全部、ひとつひとつの生きものの力強くやさしいいやしの力によって、少しずつ少しずついやされていくのでしょうね。 ああ、先ほどの少年は、ずぶぬれになりながらも、急いで家に帰ってきています。 あの、色とりどりのアジサイを育てているかわいらしいお家が、どうやら少年の自宅みたいです。 お母さんがかわいいわが子を心配し、すぐにバスタオルを持ってきて、ぬれた(かみ)の毛と身体をふいています。 少年は、自分でふけるよ、とでも言いたげですけど、その顔はなんだかてれているような、くすぐったいような表情でした。 少年は気づいたのです。 雨はやさしさのかたまりだと。
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