3 告白

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 またマサキの頭を悩ませるのはクチナシがやけに教育者として熱心になってきていることだ。  ミズキの出来栄えに満足すると、彼女はまず教養の足りない女房にも学問を与え始めることとなる。文字は読めてもかけないものが多く、そのものたちに仮名を教えはじめ、更には漢字まで書かせ、漢詩を読ませる始末だ。  マサキの子供には姫が多く、数年前にやっと跡継ぎが出来たばかりで、ついつい末娘のクチナシに男児に施すような教養を与えてしまった。  今は、それを悔やむ。 「これでは、ますます縁談が無くなるな……」  諦めと呆れが同居する表情でクチナシに告げると「あら、お父様、婚姻だけが女の道ではありませんよ」とのたまう。 「やれやれ……」  もう口出しする気力もなく、すごすごとマサキは引き下がった。  とうとう都から迎えの車がやってくる日が来た。  ミズキは長旅故、軽装ではあるが上等な装いで静かに部屋に座っていた。女房達は支度の後片付けにわいわいと部屋を行ったり来たりしており騒がしい。クチナシはあれこれと指示してきぱきとミズキの持ち物を整えさせる。ミズキの――クチナシに来ていた話――輿入れはそもそも後宮入りする正式なものではない。女官のように出仕することもなく用意された屋敷にて親王を待つ身になる。それ故、華美な都入りは避け、身一つで来られよとのことだった。  マサキが様子を見に、やってき、ミズキの装いを眺め「ほうほうっ」と感嘆する声をあげた。  扇で少しだけ顔を隠し、ミズキはマサキを正視することなく品よく頼む。
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