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「お人払いを……ご主人様とクチナシ姫様に少しお話が」
「ん? さすがに緊張でもしてきおったのか? よしよし――お前たちは下がるがよい」
クチナシを残して女房達は素早く部屋を出て行く。
「このような支度をいただきありがとうございます」
「ミズキはまるで妹のようだわねえ」
「うーむ。わしも、お前が最近は娘のように思えてきておったところだわ」
親しみと感嘆の表情をする二人にそっとミズキは漆黒の腰ひもを差し出す。
「こちらを、ご覧いただけますか?」
「ん?」
マサキが両手にとり美しい光沢をもつ黒い帯を端から端まで目を通し、隅の家紋を見つける。
「こ、これは――兄のものではないか……どうしてこれを」
「私の母はマサキ様の兄上のアオキ様と結ばれ、その腰ひもをくださいました……」
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