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中学の頃、僕はスクールカーストの底辺で暮らしていた。スクールカーストとは、クラスの生徒達の間である階級制度の事だ。
順位の決定には、顔面偏差値や頭脳、キャラの愛され度などの様々な理由がある。イケメンでもなく勉強ができるわけでも無く、周りの人間にオドオドしながら毎日を生きているような僕がカースト上位になんてなれるわけがない。むしろ最下位。カースト上位の者には抗うことは出来ないし、下位のものは上位の者の奴隷と化す恐ろしい日本の文化だ。どこの学校にも階級制度は存在し、誰もがそれに従っているので歯向かうことなど出来るはずがなかった。歯向かったら最後、僕の人生はそこで終わりを迎えることだろう。社会的に。
だから僕はじっとしているしか無かった。それでもいいと思っていた。
だが僕はスクールカーストというものを甘く見ていたのだ。
最初は最底辺なんて友達ができづらいだけだろう、教室の端で静かに過ごしているのが僕の役目だろうという認識だけだった。実際に最初の一年はそのように過ごし、上手く底辺としての振る舞いをしていたはずだった。
そんな僕の暗い人生に突然の変化が起きた。カースト最上位の神威くんに話しかけられたのだ。
神威くんは成績はいつも学年三位以内で先生にも気に入られている。授業中に多少の私語があっても先生はよく見逃していた。そして容姿も抜群に良い。例えるならワイルドとマイルドとクールを黄金比で混ぜ合わせたカフェラテのような完成度の高い整った顔だった。
簡単に言うと学年に一人はいるスーパースターと言えるような人だった。
そんなカフェラテフェイスが僕に話しかけてきたのだ。一年近く人と会話をしていなかったせいで、獅子尾くんと呼ばれても反応するのに少し遅れてしまった。しかも返答はカミカミ。世の中のライオンさんに怒られそうなほどの威厳の無さだったと自分で思う。
「僕と友達にならないか?」
突然の彼の爆弾発言に僕は十五年間で一番大きな衝撃を受けた。
もちろん彼の意図は掴めないし、不審な気もした。だが、そんなこと考えている暇などないのだ。最上位が最下位に話しかけることなんて普通三年間で一度もない。この機を逃したら友達など一生できないと思ったし最下位から抜け出せない自信もあった。
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