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「はい!おねがいします!」
声も裏返り、間抜けな顔をしていただろう。
告白の返事のようなハイテンションで返事をしてしまった。あの、青春時代特有の若々しさ溢れるテンションだった。まあ、告白なんてされたことは無いのだけれど。
それからの学校生活は華々しいものだった。授業の合間には神威くんが僕の席に話をしに来てくれ、神威くんと一緒にほかの人達も僕の席によってきた。それは僕が感じたことのない幸福感と優越感だった。
三、四人に一度に名前を呼ばれるようなことなんて初めての体験で思わずにやけてしまった。普通に引かれたが。
放課後には神威くんと二人で街に出かけ、入ったことのないようなファッションショップに入り、食べたことの無いようなスイーツを食べたり、初めてのカラオケに行ったりもした。周りから見ると、紛れも無く二人は友人で高校生活をエンジョイしているように見えていただろう。実際に僕もそのように思っていたのだからそうに違いない。
だが、そんな楽しい時間はある日突然終わった。
突然神威くんは僕をいじめの標的にし、クラス全員を煽り、僕を傷つけた。
その日から僕はクラス全員の下僕と化した。
神威くんに限らずクラスの人は皆、僕を視界に入れると理由もなく暴力を振るってきた。僕は何もしていないのに。お弁当を捨てられ、靴はなくなり、机には大量の落書き、ノート類はすべて切り裂かれた。
内容は低俗であり、肉体的には耐えれないものではなかった。
だが心はボロボロだった。
せっかく最上位の神威くんと仲良くなれたと思っていたのに、裏切られ、捨てられた。
初の友人、親友だと思っていた僕の心には大きなダメージを負った。
もう人間なんて信用できない。
そんな過去があったせいで僕は強い人に媚を売る生活をするしかなくなっていた。もう人を信じることは出来なくなり、顔色を見て、様子を伺いながら大きなものの影に隠れる。そうして兎丸をいじめている。
僕がいじめられなければなんでもいい。
熊田はさっき、ぼこぼこにした兎丸をどこかに連れていった。僕は体育館裏で少しゆっくりしてから教室に戻ったので熊田が兎丸をどこに連れていったかは知らない。熊田のことだからもっと傷つけたのだろうか。ほどほどにしてあげてほしい。かわいそうだ。
ガララッという音と共に教室のドアが会いた。国語教師の鷹島が入ってきた。授業のチャイムがなる。
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