プロローグ

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もう何度みた夢だろうか……。 物心付いた時から僕の夢にあらわれる、度々現れるその光景。 悪魔のような残酷で悲しい映像。 どうしたら、この悪夢から逃げられるのだろうか。 僕は河原に立っていた。 真上を見上げると、鷹が空を猛々しく飛んでいる。 太陽に遮られ乱反射した光が僕の目をかすめる。 僕は眩しいと感じて手で庇を作った。 鷹を追うようにして、僕の目線は一つの「何か」を捉える。 目の前には、小さな女の子が川遊びをしていた。 〈始まった……。〉 僕は瞬間的にそう思った。 女の子は河原に立ち、石を投げて遊んでいる。 女の子の表情は嬉しいのか悲しいのか複雑な顔を浮かべている。 すると、目の端にもう一つの「何か」がやってくる。 男の子だ。 歳は女の子と同じくらいか。 男の子は、女の子の横に立ち、何かをぶつぶつと呟いている。声は聞く事が出来ない。 男の子は、女の子に背を向きすたすたと離れていく。 〈どうかそのまま何も起きないでくれ〉 男の子が立ち止まった瞬間、 女の子の方から激しい音が流れる。 バシャンッバシャンッ。 女の子が体ごと川に流されていく。 泣いている男の子。 女の子はみるみる遠くへ消えていく。 僕は、どうすることも出来なかった。 これは夢だから。 体は自由に動いてくれない。 彼らにとっても僕は幻だ。 僕は、強く思う。 出来れば、この夢を最後にしてほしい。 しかし、もう10年この夢を見続けている。
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