一章

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三学期の最初の頃。その日、私は大型スーパーの食品売り場で試食販売のアルバイトをしていた。ホットプレートで売り出しのウインナーを焼いていると、お揃いの緑のランドセルを背負った男の子二人が私に近寄って来る。 二人はくりくりした目で、私の顔を見上げてきた。心なしか小刻みに鼻を膨らましているように見える。 「……ウインナー、食べる?」 私はちょうどカリッと焼き上がったウインナーを爪楊枝に刺して二人に渡した。二人は私から爪楊枝を受け取ると、ウインナーをハムスターのように頬張りながら話し始める。 「泉水(いずみ)にーちゃん、どこ行ったのかな?」 「えー? なんか野菜のとこいたじゃん。ずーっとトマト選んでたし」 ま、迷子? どうしよう……迷子センター、に連れて行くにしては大きすぎるよね?
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