一章

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大和(やまと)常葉(ときわ)! 勝手にちょろちょろするな!」 私が一人で悩んでいると、買い物カゴを片手に抱えた長身の男の子が文句を言いながらやってきた。うちの高校の制服に二年生の学年章を付けている。多分、「泉水にーちゃん」だ。 「だってにーちゃん野菜ばっかり眺めてんだもん」 「待ちくたびれたぞ」 「仕方ないだろ、鮮度確認してんだから! またそんなの勝手に貰って! お礼言ったのか?」 彼は二人が持っていた爪楊枝を見て目くじらをたて、小言を言い始める。 「ありがとーございます」 お兄ちゃんに怒られた二人が素直に頭を下げる仕草が可愛くて思わず笑ってしまった。 「いいよいいよ。お兄ちゃん見つかって良かったね」 「すみません、邪魔したみたいで」 「そんなことないよ!」 彼はちょっと驚いたように目を丸くした。無意識にくだけた言い方をしてしまって反省。ちょっと馴れ馴れしいよね。
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