一章

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「あ、すみません! うちの高校の制服だったから」 慌てて弁解すると、彼の表情がふわっと柔らいだ。 「そうなんだ? 名前、なんて言うの?」 少し態度がフランクになって嬉しい。 「えっと……菜々瀬(ななせ)です」 「へぇ、俺迫田(さこた)。よろしく、七瀬さん」 「ななせ」って優しい声で呼ばれて耳がくすぐったい。 「学校で会えたらいいね」 「そうだね、じゃあまた」 迫田くんは気さくな笑顔で手を振り、弟くん二人のランドセルを片手で押しながらレジの方に向かった。 良いお兄ちゃんなんだろうなぁ…… 何故かその日一日、彼の笑顔が頭にこびりついて離れなかった。
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