序章 幼き少年達の夢

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 ガウェインは王国騎士団において、剣の腕で騎士団長まで上り詰めた男だった。  王国騎士団は大きく二つの隊に分かれる。一つは魔法を得意とした後衛隊で、もう一つは剣を武器とする前衛隊である。  魔法が生活の全ての基盤となり、ともすれば霊力の大きさによって待遇を左右されるこの国において、剣を(おの)が武器とするという事はすなわち霊力が弱いことを意味しており、長らく前衛隊は不遇の扱いを受けてきた。ある時は魔法発動のための時間稼ぎとして、ある時は捨て石部隊として。  しかしガウェインという男はそれまでの騎士団のあり方を強く否定した。  ガウェインには非常に強い霊力があり、入隊当時は当然後衛隊に入るものと誰もが思っていたのだが、あろうことか彼は前衛隊を志願した。彼の周りの人間や、騎士団からも志願の変更を強く勧めたが、(つい)に彼の意思は変わる事はなかった。  前衛隊への入隊後、優れた霊力を持ちながら滅多に魔法を行使することなく、磨きあげた剣術の腕で次々と目覚ましい戦果をあげる彼を、はじめは非難した人々も次第にその力量を認めざるを得なかった。  それだけでなく彼は、立場の上下も部隊間も分け隔てなく積極的に交流した。上司には忌憚(きたん)なく戦術について意見し、部下にはその剣術の技の粋を伝え、後衛隊の者とも対等に新魔法開発の論議をする彼を、いつしか周りの人々は王国騎士随一と(たた)えるようになった。
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