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そんな父、ガウェインにアレンは強く憧れていた。それはレオンも同様で、『とうさんのようなきしになる』それが二人の口癖だった。
父もまた息子達を愛し、忙しい身ながら二人に稽古をつけ、惜しみなく自身の持てる技を伝えた。
アレンは剣術が、レオンは魔法が得意だった。父は剣術も魔法も教えてはくれたが、騎士団において彼が魔法をあまり使わないということを二人は知っていた。
ある時レオンがガウェインに尋ねたことがある。
「とうさんは、まほうがきらいなの?」
不安そうにそう聞く息子の頭をなでながら、いいや、とガウェインは笑って答えた。膝をついて目線を合わせると、二人の小さな手を両手に握り、真面目な声でこう言った。
「二人とも、良く覚えておきなさい。魔法は確かに便利だし、とても強い力だ。だけど、魔法はけして人間だけで使える力じゃなくて、精霊が力を貸してくれているんだ。だから魔法を使うときにはいつも、精霊へのありがとうの気持ちを忘れちゃいけないよ」
「せーれー?」
「えほんのなかにでてくる、あのせいれい?」
父の言葉に二人は同時に首を傾げた。確かにいろんな絵本に姿形を変えて出てきはするものの、それはおとぎ話の世界のことであって、まさか父がまじめな顔でそんなことを言うとは思ってもみなかった。いまいち腑には落ちないが、しかし父はこれまで一度も嘘はついたことはなかった。
「いつか分かる時が来るさ。とにかく、感謝を忘れて力だけを追い求めちゃいけないよ。大きな力は、使い方を間違えると大変なことになる。それは覚えておくように」
「「はーい」」
――そんな父ガウェインはその後、アレンが8つ、レオンが9つのとき、何度目かになる隣国との戦争に出て、そのままついに帰ってくることはなかった。
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