1章 王国騎士団

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 一方、騎士団後衛隊の模擬戦闘、レオンは自身よりふた回りは年上かという男と対峙(たいじ)していた。  若さや体力が大きな武器となる剣技や格闘技と異なり、力技を必要としない魔法の世界において、何よりの武器となるのは深い知識と多くの経験である。  そのため後衛隊志願者には比較的年齢を重ねた者達が多く集まる。入団資格の下限に近い年齢のレオンはほとんど最年少の部類だった。 「――――風よ、炎を(まと)いし刃となりて――我に(あだ)なすものを切り裂け!」 「ぐっ……ああぁ!」 「そこまで!」  レオンの放った炎と風の刃が、対する男の肌を裂いた。耐えきれず膝を折った男に、審査に立つ騎士から戦闘終了の旨が伝えられる。 「威力、発動速度、術の練度、共に申し分ない一撃だった」 「どうもありがとうございます」  審査員からそう評定を受けたレオンは礼を言って頭を下げた。闘技台から降りると、いまだ金属音の響く壁の向こうを見やる。 「……さて、アレンのやつはどうなったかな」
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