プロローグ ~創世のおとぎ話~

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 かつて、人間は世界の(いしずえ)を築いた精霊と共存していた。人間は精霊へ敬意の念を捧げ、精霊はその力のほんの一部を人間へ貸し与えた。精霊の力によって行われる不思議な現象を人々は【魔法】と呼んだ。それは炎を起こし、水を生み出し、それにより人々の生活は更に豊かになっていった。彼らの社会はやがてひとつの国へと発展し、いつしか魔導王国(まどうおうこく)【イーリオン】と呼ばれるようになった。  長い時がたつにつれ、人間達はその知能で魔法についての知識と理解を深め、より効率的に大きな魔法を行使できるようになっていった。  人間の中には生まれもって精霊の存在を良く感じ取れる者達がおり、彼らはより強大な魔法を扱うことができた。人々は彼らを精霊と交信する力――霊力(スピリタス)の強い者として(あが)め、国は彼らを中心に発展するようになった。一方で霊力の強さはその限界が生まれつき定まっているため、その大小に伴い、世界には格差が生まれた。  ある時、霊力が低くそれ故に虐げられる者の中に、この格差を疑問視する者が現れた。彼は長い時間をかけて多くの同士を(つの)り、大規模な反乱を起こすと、ついには時の権力者達を殺害した。これを機に、霊力を持つ者、持たざる者との間に長きに渡る争いが始まることとなった。  反乱者達は新たに国を立ち上げると、魔法の力を必要としない道具や兵器――【機械】の開発に勤しんだ。その国では魔法は禁忌(きんき)の力とされ、生活のすべてにおいて魔法は消え去り、機械が取って代わった。  彼らの国――【アルカディア】はいつしか、機械帝国(きかいていこく)と呼ばれるようになった。
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