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城の周りに広がる城下町は今日も多くの人々で賑わい、活気に溢れている。大陸たっての大都市であるこの街には、王国中から人が集まる。観光に訪れる者、商売をしに来る者、なにかしら一旗揚げてやろうと意気込む者。その目的は様々だったが、最も多いのが騎士団志願者だろう。
魔導王国にはその秩序や平和を守るべく、王国騎士団という組織が存在した。時には凶暴な魔物と、時には戦争中である隣国と、果敢に戦う彼らに国中の人間が憧れた。
依然として賑やかな石畳の大通りに、蹄の音と重厚な鎧のこすれる音が響き渡った。
「騎士団だ!」
大衆のうちの一人が声を上げると、大きな歓声とともに、ざっと人の波が割れる。その間から現れたのは赤褐色の大きな馬と、それに悠然と跨る銀の甲冑の男。たなびく赤いマントの後には同様の鎧姿の者達が一糸乱れぬ隊列で続く。
「剣の騎士だ!」
「東の村に魔物が出たらしい、その討伐だろうな」
「今回も頑張ってきてくれ!」
「いつもありがとう!!」
人々の間から飛び交う声援に、剣の騎士と呼ばれた男は軽く手を挙げて答える。黄色い声援があがったのは彼に女性ファンも多いからだろう。
不意に彼は手綱を軽く引き、跨る馬が歩みを止めた。彼が何か呟くと同時に、その手からぼんやりとした光とともに現れたのは、無数の茨の蔓。それらは人波をかき分けると、ある一人の男の手足に巻き付きその動きを完全に拘束した。
茨に絡めとられて地面でのたうつ男はこの辺りでは常習犯の盗人だった。その店で売られていたのは色とりどりの宝石を携えた美しい宝飾品。店主や周りの客の目が騎士団に向かっている間に、それらを素早くくすねた男だったが、今やなすすべなく石畳にその身を横たえていた。
「その男を牢へ」
「はっ!」
群衆からは再び大きな歓声があがった。
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