序章 幼き少年達の夢

3/8
前へ
/67ページ
次へ
 この国では基本的に全てが魔法によって成り立っている。交通、料理、医療に至るまで、生活の根幹は全て魔法に支えられていると言っても過言ではない。【魔法とは精霊の力を借りて行使する術である】と古い文献や物語では伝えられているが、その存在を信じる者は今やほとんどいない。ただ当たり前の、必要な術として魔法は存在していた。  魔法、と一口に言ってもその種類も規模も様々である。毎日の飲料水を生成するのも魔法であれば、長く戦争を続けている隣国への対抗兵器となるのもまた魔法だ。  この国の人間にとって最も身近で大きな魔法といえば、通称【精霊(せいれい)加護(かご)】と呼ばれる魔法陣だろう。王国全域に渡るこの巨大な魔法陣は、魔物を退ける聖なる力を持っており、祈りの塔から王家が代々に渡って発動し続けていると言われている。この魔方陣のおかげで王国内における魔物による被害は激減した。  王国の人間はみな例外なく魔法の力を行使することができたが、そのために必要な素養である霊力(スピリタス)の強さは人により様々だった。高い霊力を持って生まれた者は強大な魔法を行使できるため王国中で重宝される。王家が長く繁栄できているのも、精霊の加護を行使しうる高い霊力のおかげだった。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加