遺言状

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 私は東京の郊外にある、その施設へ行ってみる事にした。  とある民鉄に1時間程乗り、最寄り駅で降り、30分ほどタクシーにのり、畑の真ん中にある施設についた。  そして、私はスタッフに会う前に、二階建ての施設を一周してみた。  それは、もう酷かった、水道から塗装から、窓から見える畳に至るまで、痛みが進んで、ボロボロだった。それは施設の外から見ても充分分かる程だ。  中に入ると園長先生の茂子先生が笑顔で迎えてくれた。  するとどうだろう、そこで生活している30名ほどの子供たちが笑顔で次々に挨拶してくれるのだ。  子どもたちは様々な事情でここに預けられている、でも、私が今まで見たこともない、真っ直ぐで素直な笑顔なのだ。  私はこの時初めて気がついた、妻やお手伝いさんに任せっきりで、お前たちの本当の笑顔をみた事がなかった事に、はじめて気がついたのだ。
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