遺言状

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 息子たちよ。  浩介、雷太、高雄よ  この遺言状を読んでいるという事は私は自死しているという事だ。  病院の非常階段から飛び降りて即死だろう。  病院にはご迷惑をかけるが、八木弁護士にお願いがある、病院には幾ばくか、慰謝料を払って頂きたい。よろしく頼む。  さて、息子たちよ、この遺言状は、お前たちもよく知っている八木弁護士に託しておいたから、私が死んで直ぐにお前たちの前で開封された事だろう。  八木弁護士は、私とは三十年来の付き合いだ、だから須く私の言う通りに遂行してくれるだろう。  勿論、八木弁護士立会いのもとで封印してあるので、この遺言状の法的効力は言うまでもない。  息子たちよ、先月の暑さで私が倒れて入院し、昏睡から覚めてから、ボケけているふりをしていたのに、気が付かないとは愚かなやつらだ。  私は少しもボケけてはおらん。  そのお陰でお前たちの本心が良くわかった。何もわからないと思って、目の前で好き放題言っておったからな。
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