遺言状

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 私の通帳も印鑑もキャッシュカードも盗んだろう。全てお見通しだ。  だからこそ早急に自死する事を決めたのだ。  私は、既に癌が全身に転移しておる。  お前たちには一切語らなかったが、主治医の斎藤先生とは長い付き合いだ、もし癌になったならば、私にだけに告知してほしいと前々からお願いしておったのだ。  私は放っておいても、あと半年程で死ぬ。  私は無宗教だが、ほんの数ヶ月前倒しで死ぬ事に、神さまも文句はないだろう。  この先、少しでも時間があればお前たちは、悪知恵を働かせて貯金を全てどこかに隠すであろう、だからこそ私は、今、死ぬ必要があったのだ。  だが、私は悲しい。  三人が三人とも、親の金をあてにしてろくすっぽ真面目に働らこうとしない。  私が、六十三歳ということは、浩介は三十二、雷太は三十、高雄は二十八になるのだろう。確かに十八年前に母親と死に別れてから、悲しい思いをしただろう、だが、男だろ、甘えるな、自分たちで何とかせんでどうするのだ。
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