遺言状

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 それに、会社は副社長の安西に継がせる。株主たちの承認もとってある。  お前たちに継がせると、三十人いる従業員を路頭に迷わす事は目に見えているからな、ただし、会社の30パーセントである、私の持ち株は全部お前たちにやろう、売るなり、持っているなり好きにするがいい。自宅の土地と建物もお前たちにやる。  但し、もし社長になりたいなら、重役につきたいなら、現場からやり直せ、平社員で入社して、先輩について一から現場で汗を流せ、土を掘れ、セメント袋を担げ、塩ビ管を切ってみろ。  十年だ、十年たって職人として一人前になったならば、経営陣として参加させてやって欲しいと、安西には別の遺言状を渡してある。  それ以外に道は無いと思え。  株主総会における、創立者親族の発言を十年間認めないという条項も、会社規約に追加しておいた。  どうして遺言状にこう言った事を書き連ねるのか、それには訳がある。
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