遺言状

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 実は私は、人生で大きな過ちをおかした、二人の人間の人生に関わる重大な過ちだ。  それをこれから記する事にする。  私もお前たちと同じく、小さい頃に母親を亡くし親父は青森で小さな金物屋をやっていた。親父は、毎日仕事仕事で全く構ってくれなかった。一緒に遊んだ記憶が全くない。  高度経済成長も終わり、加えて、スーパーマーケットやホームセンターが建ち始めると小さな金物屋の経営も傾き、親父は荒れ始めた。時には酒に溺れ、機嫌が悪いと暴力を振るわれた事もある。  私はそんな親父が嫌いだった。  親父には愛情を注がれた覚えが全くない、だから、正直、お前たちににどう愛情を注いでいいのか分からんのだ。  私は、次第にグレ始め、中学生卒業と同時に家出した。年齢を誤魔化し、日雇い仕事をして、悪友の家を転々とし、そのうちキャバレーの裏方で働きだすと、年上の彼女を作ってはアパートに転がりこんだ。
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