遺言状

7/15

13人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 そして、17歳の頃に出会ったのが礼子だった。礼子も小さい頃に両親を亡くし、高校に行かず水商売の世界に飛び込み、その頃は24歳だったと思う。  私たちはなぜだかウマが合った。身体の相性も抜群だった。そのうち私は、稼ぎのいい礼子に頼りっきりになり、小銭を稼ぐのがバカらしくなった。次第に仕事もしなくなり、礼子にべったりの生活をおくるようになったが、嫌な顔一つせず、私を養ってくれていた。  そんな自堕落な生活を2年ほど続けていたろうか、私は19歳で立派なヒモとなっていた。  だが、忘れもしない19歳の8月15日、そう終戦記念日だ。  礼子は一通の手紙と10万円を机に置いて忽然と姿を消した。  手紙には「彼氏ができたので別れます」とだけ書かれていた。  意気がっていた私は、変なプライドだけは人一倍持っていたから憤慨した、当たりどころのない怒りが込み上げ、アパートを始末すると10万円を手にして東京へと出た。  東京で一旗あげて見返してやろうと思ったのだ。  それが20歳の時だ。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加