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桜は2杯目の紅茶に口をつける。
体はすっかり温まっていた。
智司の母親、直美がリビングのドアから顔をのぞかせた。
「桜さん、晩御飯を食べていくでしょ?」
「映画だけの予定だったので。夕食は家で食べると言って出てきました」
「残念。お食事はまた今度ね。出かけてくるから、ゆっくりしていって」
ドアが閉まる。
息を吐いてソファにもたれかかると、廊下から智司と母親の会話が漏れて来た。
「もっと早く連絡してくれないと。お片づけが大変だったじゃない」
彼が反論するのに聞き耳を立てながら、リビングを見渡す。
同じ色調の家具で統一されたモデルルームのような部屋だ。
片づけにそれほど手間が掛かるようには見えなかった。
「息子が彼女を家に連れてくるのは、母親にとって特別なイベントなの」
直美のコメントに続いて、玄関のドアが閉まる音がした。
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