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静けさが訪れ、壁掛け時計が秒を刻む音が響く。
桜がうっすら温もりを増してきた頬に手を当てると、リビングのドアが開いた。部屋に飛び込んできたのは、智司ではなかった。
ワンサイズ大きいロングTをざっくり着こなした、17、8歳の少女だ。
背の高さは、桜と同じくらい。
ツインテールの黒髪を緑色のリボンで結んでいる。
「ごめんなさい。お客さん来てたなんて」
少女は手慣れた様子で食器棚からマグカップを取り出し、ティーポットの紅茶を注ぐ。
呆然とする桜を尻目に、カップを胸元に抱えてドアのところへ戻る。
少女は再び口を開いた。
「ガールフレンド? 智司、もてるんだ」
返事も聞かず、廊下へと姿を消した。
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