ひとすじの煙 (Smoke, Get in her eyes !)

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七夕は曇りか雨降りが多いというけれど、今年は梅雨晴れだった。 桜と智司はまた、シネコンに来ている。 ゴールデンウィークが明けて以来、桜は毎週末のデートを彼に強要していた。 大学の授業もほぼ同じ選択なので、毎日のように一緒にいる。 彼が幼なじみの知代と顔を合わせる機会も減っただろう。 桜の顔には交際を始めた頃のような笑みが戻っていた。 これから観る映画は、幽霊になった男性が心を残した女性を陰ながら助けるという、智司の好む現代ファンタジーだ。 見終わった後は彼の家で、夕食をご馳走になる約束を取り付けている。 「母さんが昨日から張り切っちゃって」 晩飯が楽しみだと言いかけた智司が、前のめりによろめいた。 突然、後ろから背中を突き飛ばされたのだ。 「智司、何してんの? ぼうっとして」 ストレート・ロングの女性が、彼の腕を掴んで引き上げる。 そのまま巻き付くように腕を絡め、体を密着させた。 「知代か。いきなり後ろからどつくなよ」 「ごめんね、デート中だって知らなかったから」 彼女はうっすらと化粧をしていて、ずいぶんと大人びて見える。
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