11人が本棚に入れています
本棚に追加
堤
(みんな幸せに暮らしてる。よかった……)
私のいない世界。そこには、皆が幸せに暮らす様子が広がっていた。
ある石碑の前にひざまずく、一人の老婆を除いては……
(かあさん……)
手を合わせ、祈る母親が、随分と歳をとっていた。そりゃそうよね、もう二十年にもなるのだもの。
今は、水難を免れ、幸せそうな笑顔を浮かべていることに、安定した生活がおくれているのだと感じていた。
まだ、私が生きていた頃は、皆、一様に疲れ果てていた。それを今でも鮮明に思い出せる。
最初のコメントを投稿しよう!