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『壱代、もういいのかい?』
(はい、龍神様。みなの元気な姿を見れましたから……)
あれから両親は、私の事で苦しんでいた。
私は昔から感がいい事を、両親も知っていた。それを逆手に、追い詰められてはいたとはいえ、自分達が、私がこう選択する事を心の中で願ってしまった事を、本当に苦しんでいた。
両親や、他の人々を恨む気持ちが、少しも無かったと言えば嘘になるが、そんな気持ちを気づいてくれた、群司様に私は少し救われていた。
でも今はそんなみんなの気持ちを知って、皆を許そうとそう思えていた。過ちを繰り返すのも、また人のサガであると今の私にはわかるから。
見下ろした石碑には、二人の夫婦と数人の子供が手を合わせていた。
「壱代さん、本当にごめんなさい。私が本当はそうなるはずだったのに……」
そう言った、雪菜の目には涙が溢れていた。
「壱代、俺はお前に、本当の気持ちを最後まで伝えられなかった。ありがとう、そして、好きでした」
知ってたよ、見ちゃったから私。そう思った私はすっと勝喜に近寄ると、額に口づけした。
『行こうか壱代』
(はい)
私は龍神様の手に触れると、すっと空へと舞い上がった。
空には、雲ひとつないとてもいい天気が広がっていた。
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