11人が本棚に入れています
本棚に追加
「また、川が氾濫したって、もう何回目なの。このままじゃ、餓死してしまうわ」
母の声が、末の弟を寝かしつけた、私の耳に届く。その声は、まだ若いにもかかわらず、疲れ果て、弱り切っていた。
私は、農家の兄弟姉妹、七人の長女として生まれた。
十四歳になった私は、家族のために日夜を問わず働いていた。でも、それは私だけでは無く、同い年の子はみんなやっている事。ただ家族が多い事を除いて。
「壱代、ごめんね貴女ばかりに苦労をかけて」
「うんん、かあさんの方が大変だもの、平気よ」
弱り顔で、申し訳なさそうに話す母に、私は笑顔を返していた。
ここ数年、もう何度も氾濫を繰り返す川は、私達の生活をおびやかしており、その度に食糧難に悩まされる事になっていた。
その為、私たち一家は家族が多いこともあり、食料不足は死活問題であった。
最初のコメントを投稿しよう!