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「また、川が氾濫したって、もう何回目なの。このままじゃ、餓死してしまうわ」  母の声が、末の弟を寝かしつけた、私の耳に届く。その声は、まだ若いにもかかわらず、疲れ果て、弱り切っていた。  私は、農家の兄弟姉妹、七人の長女として生まれた。  十四歳になった私は、家族のために日夜を問わず働いていた。でも、それは私だけでは無く、同い年の子はみんなやっている事。ただ家族が多い事を除いて。 「壱代(いちよ)、ごめんね貴女ばかりに苦労をかけて」 「うんん、かあさんの方が大変だもの、平気よ」  弱り顔で、申し訳なさそうに話す母に、私は笑顔を返していた。  ここ数年、もう何度も氾濫(はんらん)を繰り返す川は、私達の生活をおびやかしており、その度に食糧難に悩まされる事になっていた。  その為、私たち一家は家族が多いこともあり、食料不足は死活問題であった。
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