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「俺のとこも今年やられたよ」
「わたしのとこもよ」
幼馴染の勝喜と雪菜が、そう呟く。
「うち、家族が多いから、このままだと食料が足りなくなるわ。どうしよう……」
私は母の顔を思い出し、思わず涙目になる。
「今、堤を築く作業をしてるだろ。あれが完成するまでの辛抱だよ」
そう言って、私の肩をそっと抱き寄せてくれる。とても心強く、嬉しかったけれど、雪菜の恨みがましい視線は痛い。
「でも、完成には人柱が必要らしいよ。誰がなるんだろう……」
そう口にした雪菜は、ちらっとこちら見てくるので、私は視線をそらす。雪菜は真面目だし、悪い子じゃないけど、苦手意識がある。
それにそんな目を向けられても、困る。私もまだ死にたくないもの、人柱なんて嫌だわ。
「もうじき堤が完成するそうよ」
「完成には人柱がいるのだろう、どうやって人選するんだろうか?」
「若い娘さんを選ぶそうよ。うちも壱代がいるから心配ね」
寝床で弟達を寝かしつける、私の耳に聞こえてくる。ますます食料が減ってしまった。
家族も少し痩せてきている、きっと気のせいではないだろうと、自分の体を見てそう思った。
家族の人数が減れば、家族も助かるだろうと私は感じていたし、両親も心のどこかでそう思っているのを肌で感じていた。世知辛さ世の中だと、どこか他人事のように感じてしまっていた。
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