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ある日私は、勝喜と雪菜ちゃんが一緒にいるのを見かけた。
始め、声をかけようかと思ったのだが、深刻そうにしている、顔を見て話しかけるのをやめたが、気になってしばらく様子を見ていた。
「私、勝喜のことが好きなの、なんで私じゃだめなの、ねぇ」
「すまない、俺は壱代の事が好きなんだ、お前の気持ちに答えられない」
「そんなの、知ってるわ。なんども、私もあきらめようと思った。でも、だめなの、私も貴方のことをあきらめられない」
「すまない……」
そう言うと、勝喜は走って去って行った。
私は、そんな様子に立ち去ろうとするが、思わず物音を立ててしまう。背筋に冷たい物を感じながら、雪菜を見ると、暗い物を目の奥に携え、こちらを睨んでいる。
「壱代ちゃん、見てたの」
「……」
私は言葉を返すことが出来ない、どんな顔をしていたのか分からないが、知るよしもないが、きっと引きつるような、表情であったのだろう。
「壱代なんて大っ嫌い、あんたなんか死ねばいいのに」
雪菜ちゃんはそう言うと、振り返り、そこに滴をちりばめ去って行った。
雪菜ちゃんの言葉が心に突き刺さり、私の中にある暗い気持ちが掘り起こされるよな、そんな気持ちになっていた。
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