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「どうかな? 見事なものであろう? これほどの美しさを保っているのは、わしの優れた魔法技術と強い魔力があればこそだな」
私がお茶の準備を整えて、応接室に入るなり、主人であるソーグラ・イールは私の存在を自慢しました。
私の名前はヘレナ・アバソル。ソーグラ様に所有されている物です。
「ソーグラ殿の死霊魔術はまこと見事なものですな。とても50年前に亡くなった少女の亡骸などとは思えない。瑞々しい若さにあふれた、美しいお嬢さんだ」
来客のスコア伯爵は私の姿を誉めて下さります。
私はうれしくなり、スコア伯爵に笑顔を見せながら紅茶を差し出します。
「どうぞ。本日はニルサムの茶葉で淹れてあります」
「声も本当にかわいらしい。……紅茶の淹れ方も実に熟達していますな」
「お褒めにあずかり、光栄でございます」
スコア伯爵は私の淹れた紅茶を飲むと、お気に召したのがずいぶんと喜んでくれます。50年近く、メイドをやっていれば紅茶の淹れ方にも年季が入るというものです。
「美しい少女のゾンビというものは、まこと調度品にはすばらしいものですな。見目にも麗しく、接客にも使える。私も屋敷に一体欲しいものですな」
スコア伯爵が私を舐めるように見つめながら、自分も私のようなゾンビが欲しいと語ります。
「材料があれば、わしのところへ来られるがよい。きっちりと仕上げてみせようぞ。腕の悪い死霊魔術師は20年で腐ってスケルトンになるようなゾンビを作るが、わしのゾンビは千年万年でも美しいままよ」
そう、私はゾンビなのです。ソーグラ様の死霊魔術によって死から蘇った動く死体です。
肌は青白く、瞳孔は開ききっていますが、ソーグラ様が豪語するように腐っている部分など寸分もなく、ほとんど死んだ時のままの姿を保っています。
「ははは、その材料の調達が難しい。死人に人権はなくとも、生きている人間には人権がありますからな」
「当たり前だ。出所の怪しい材料には手をださんぞ」
「若く美しい娘の不幸があっても、欲しがる者が群がって私などには手が届きませんな」
ソーグラ様とスコア伯爵は、少々物騒な談笑をしています。
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