僕を殺す病

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真っ昼間だというのにカーテンを閉めきり、槙村は死んだ息子のことを思い、リビングに立ち尽くしていた。 ポタポタと落ちる滴がカーペットを濡らす。どれ程の時間そうしていたのか、喉の渇きで我に返った。 テーブルの上にあるグラスに手を伸ばしたその時。 誰もいるはずのない部屋で空気が動いた気がした。気のせいだと思いながらもゆっくりと振り返る。 信じがたい現象に息を飲んだ。 それが息子の姿をしていなければ、情けない声を発していたに違いない。 幽霊というものを初めて目にした槙村は、開いた口をなかなか閉められずにいた。 眼前には、裕太の姿をしたものが、下から槙村を見上げている。 姿、形は人のそれだが身体は薄く、透けてみえた。 しばし視線を交わしていると、 (どうして僕は死んじゃったの?) 唇は動いていない、それなのに生前となにひとつ変わらない裕太の声が、槙村の耳には、はっきりと聞こえた。 突然の死だった。子供の裕太が理解出来ないのも当然のこと。 槙村は変に誤魔化さずに、正直に答えた。 「ごめんな、裕太......病気を──治せなかったんだ」 幼いころから患っていた病。 何度か発症したことはあったのだが、長いこと影を潜め、安定していた。しかし最近になり急激に症状は悪化し、病は大切な家族を殺した。 裕太に槙村の声が聞こえているのか、無表情の面をしていて読み取れない。 すると、 (僕は──病気じゃなかったよ?) また、声が聞こえた。今度は少し困惑したような声。槙村は裕太を諭すように優しく応えた。
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