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イエスマンのひーちゃんがそれをことわる理由がないのもわかっていた。
イベントは終わり、あとは主催側の人ばかりで暗かったホールは明るくなり、みんなそれぞれ道具を片付けたり積み込んだりしていた。
創が1人になるのを見計らってアドレスを書いた紙をわたした。
創はありがとう、と言ってすぐにその場で自分のアドレスも教えてくれた。
でも、私がひーちゃんと付き合ってたこと、創はきっと知ってる。
別れたことなんて知らないかもしれないし。
なんとか、ひーちゃんとはもうただの友だちだってこと伝えられないかな、
そう思った。
荷物を全て積み込み、矢野くんとひーちゃんの車2台で山へ向かう。
夜中の山の匂い。月も出てる。
私が星がきれいだと言うと矢野くんが
「星、好きなんだ?」と尋ねてきた。
『うん、詳しいわけじゃないけど』
でもさ、と横からひーちゃんが口を挟む。
「真波、よく星見にいってるよね」
そうなんだ?なんか浪漫があるね
俺、星座とか全然しらない
矢野くんとひーちゃんが話しているけど創は黙って車から楽器を降ろして叩き始めている。
本当に口数の少ない人だな、とおもう。
どうでもいいような軽く当たり障りのない話をする人達が多い中、創の静かさがとても心地よかった。
虫や鳥の声に混ざる創の音。
星を見るふりをして目を閉じて創の音を聴いていた。
きっと私は、もうこの音以外に惹かれる音はないんじゃないだろうか。
恋とも呼べないようなくだらない恋を重ねてきたことを少し後悔しながら、創とならきっと…と期待をしてしまう。
また私は恋におちてしまった。
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